「あらゆるものをブランドにする」SUSTAIN ABLE DESIGNの可能性

私は長年、商品を「売る」ことに情熱をかたむけてきました。売上という数字が明確な評価指標になり、目標達成に向かって社員全員が突き進む。そのプロセスは分かりやすく刺激的でした。しかしふと、こう思う瞬間があったのです。「本当に“売る”だけでいいのだろうか?」と。

モノがあふれる現代、「あらゆるものをブランドにする」――このフレーズを初めて耳にしたとき、正直に言うと少し大げさに感じました。でも、SUSTAIN ABLE DESIGNというプロジェクトに出会い、その言葉が意味するところを理解し始めると、むしろ「そうか、どんなモノもブランドとしての物語を宿すことができるんだ」という発見がありました。

■ モノの向こうにある“ストーリー”
たとえば、私たちが日常的に手にするコーヒー豆。どこの農園で、どんな農家さんが育てたのか、どういう想いで輸入され、焙煎され、私たちの手元に届いたのか。そうした背景を知ると、「コーヒー」という商品が持つ物語は一気に膨らみます。SUSTAIN ABLE DESIGNの考え方では、こうした“背景”や“想い”をきちんと伝え、そこに共感してくれるファンとつながることで、たった一袋のコーヒー豆が“ブランドとしての価値”を持ち始めるのです。

私が携わってきた会社も、正直なところ「さあ、今月はいくつ売るか」が常に最優先で、あまりにも“売り終わったら関係が完結する”スタイルが続いていました。でも、このプロジェクトでは「消費」ではなく「つながり」をテーマに掲げていた。それがなにより新鮮でした。

■ いっしょに育てる、ずっと愛されるブランドづくり
SUSTAIN ABLE DESIGNのキャッチフレーズは「一緒に育てる、ずっと愛せる。」。これは私たちが知らず知らずのうちに見落としてきた価値を、改めて浮かび上がらせてくれます。
「ファンはただ買うだけじゃない、共にブランドを育てる仲間になれる」――そう考えると、売上目標や広告費の削減といった経営指標の前に、もっと根源的な喜びがあるのではないかと思うようになりました。

実際、コミュニティのイベントに足を運び、ファンの方の声を聴くと、驚くほど多くの人が「応援したい」という純粋な気持ちを持っていたんです。メーカーとしては“なぜファンがそこまで熱を入れてくれるのか”不思議に思うかもしれません。けれど、その背景には「自分たちの暮らしに役立つモノを長く応援したい」「作り手の想いを知ると他人事じゃなくなる」という当事者意識が育まれているのだとわかりました。

■ モノと人を循環させるコミュニティ
SUSTAIN ABLE DESIGNでは、企業とファンだけでなく、地域社会や投資家、教育機関など、さまざまな人々が「チーム」としてつながります。最初はどこか遠巻きに見ていた方でも、いざイベントやSNSでのやり取りを続けると、自分のアイデアを提案したり、企画に携わりたくなったりする。まるで学校の文化祭のような熱量です。

たとえば、ある地域で作られる伝統工芸品を取り扱ったとき、「この工芸、そのルーツや職人さんの思いをもっと知りたい!」という声がファンから挙がりました。そこでオンラインサロンを開いて職人さんをゲストに招いたところ、地元のNPOや観光協会、さらに伝統工芸を学んでいる学生までもが集まり、結果として新しい商品企画へと発展したのです。「必要な人に必要なものを届け、プラスの循環を生む」――この言葉を、まさに体感する場面でした。

■ “ブランド化”はどんなモノにも宿せる
私がこのプロジェクトで気づかされたのは、“ブランド”とは高級品や大手企業だけの特権ではない、という事実です。地域の野菜だって、地方の小さな宿泊施設だって、あるいはまだ形になっていないアイデアだって、真心を込めて生まれたものには必ず「物語」があります。それを本当に必要とする人に届けるしくみが、SUSTAIN ABLE DESIGNが掲げる「ファンクラブ的コミュニティ」のかたちです。

このしくみの強みは“対話”を軸にしていること。作り手が商品やサービスの背景を伝え、ファンがそこに共感を寄せる。そして「もっとこういう工夫が欲しい」といったフィードバックが戻り、次の改善や新企画につながる。その繰り返しが「モノの価値」を深化させ、結果として「ブランドの魅力」を高め続けるのです。

■ 「売る」先にある未来
売上だけを追う時代から、共感や循環を育てる時代へ。私たちはいま、そんな大きな転換期に立っているのかもしれません。もちろん、ビジネスにおいて収益は大切です。けれど、収益は「いかに多く売ったか」だけで成り立つものではありません。ファンが長く商品やサービスを愛し、周りの人を巻き込んで応援してくれる――その連鎖がブランドの安心感と安定的な成長をもたらし、収益も結果としてついてくるのだと学びました。

「一緒に育てる、ずっと愛せる。」という言葉には、私自身が救われてきた感覚があります。お客さまとして向き合うだけではなく、「このブランドは私のものでもある」という意識をファンに持ってもらうこと。それこそがブランドにとって最高のアドバイザーであり、最高の仲間づくりと言えるはずです。

■ 最初の一歩は「想いを伝える」ことから
では、どう始めればいいのか。難しく考える必要はありません。まずは、自分(企業)が何を大切にしていて、その商品やサービスに込めた想いは何なのか、包み隠さず伝えるところからスタートすればいい。SNSでもいいし、イベントや小さな勉強会でもいい。ファンと直接会い、オンラインでもオフラインでも対話を重ねる。その積み重ねが、ブランドとファンの絆を育んでいきます。

私たちがこのSUSTAIN ABLE DESIGNのプロジェクトで得た学びは、「あらゆるものをブランドにする」ためのエンジンとなるのは、作り手とファンがともに育んでいく“対話の場”だということでした。決して大げさな話ではなく、身近な製品やアイデアが、ほんの少しの共有や共感をきっかけに、全く新しい可能性を開いてくれるのです。

■ 最後に
モノづくりはゴールではなく、私たちにとって“スタート”なのだと今では思えます。売って終わりだったはずの関係が、その後もファンと共に循環し、成長しあう。他愛のない会話から生まれたアイデアが大きなプロジェクトに発展し、地域や社会を巻き込む可能性を秘めている――そんな未来を描けるのが、このSUSTAIN ABLE DESIGNです。

「どうやってファンを作るのか?」と悩むより前に、まずは自社が持つ物語を信じ、丁寧に伝えてみましょう。“ブランド”になるための魔法は、特別なものではなく、そこにいるすべての人々の共感と参加意欲から始まるのです。そうして育まれた思いが循環し続けるとき、初めて「あらゆるものをブランドにする」という言葉が現実のものとなるのだと、私は確信しています。

Today, I would like to focus on a news story about business hotels rapidly expanding into small towns in Okayama Prefecture. This topic raises an important question: how can we rediscover the value of our regions and achieve sustainable growth?

In February, the newly opened “Hotel Route-Inn Okayama Maniwa” became the first hotel in Maniwa City with over 100 rooms, boasting a total of 161 rooms. When I first heard this news, I was both surprised and impressed. Maniwa City, with a population of 40,000, is far from a major metropolis. Yet, Route-Inn Japan chose this location due to its convenient transportation, the presence of the famous Daigo Sakura, and the rising popularity of a new travel style known as “slow travel.”

I strongly resonate with the concept of “slow travel.” It encourages travelers to immerse themselves in the local culture and nature, opting for longer stays to seek deeper experiences. This approach aligns closely with the regional revitalization strategies we aim to pursue. Rather than treating a place as a mere stopover, visitors should be given the opportunity to truly experience its unique charm. The expansion of business hotels in such areas plays a significant role in making this possible.

However, becoming a popular tourist destination comes with challenges. Issues such as overtourism, pressure on local businesses, and labor shortages arise when a region undergoes rapid transformation. To address these challenges, close cooperation between local communities and businesses is essential to ensure sustainable growth. Maniwa City’s initiative could serve as a pioneering model in this regard.

I have personally worked on projects aimed at uncovering the latent value of various regions by understanding their unique characteristics and challenges. Creating mechanisms that local residents can take pride in is, in my view, the true path to meaningful regional revitalization. The expansion of hotels in Maniwa, Ibara, and Tamano will likely serve as a platform for interaction between locals and tourists, allowing both sides to discover new value.

At Sōsha, we continue to explore new possibilities while learning from these developments. As times change, preserving a region’s culture and history while unlocking its true potential remains the key to the future.