食品流通の本質的な課題は、「品質管理」ではなく「プロセス管理」です。
いかに優れた生産体制を整えても、
その情報が流通、営業、店舗、消費者へと正確に伝わらなければ、
最終的な“品質”は保証されません。
装舎は、AI×業務プロセス設計を通じて、
**「現場の判断」「情報の流れ」「管理の裏付け」**を一つの仕組みとして再構築します。
それにより、現場が蓄積してきた知見をデータとして共有し、
組織の中に“再現性のある信頼”を生み出します。
近年、食品業界では「品質事故の再発」「サプライチェーンの混乱」「トレーサビリティの限界」といった問題が注目を集めています。
背景には、生産から流通までの情報の非連続性が存在します。
多くの企業では、
生産現場:Excelや紙帳票によるローカル管理
流通:複数ベンダーによる独自フォーマット
小売:POS・発注システムによる販売情報
といったように、データが断片化し、互換性を欠いています。
結果として、**「どのロットがどの店舗にいつ届いたか」**という基本的な情報でさえ、即座に照合できないケースが多発しています。
この“断絶”は、単なる技術的問題ではありません。
たとえば製造工場の現場では「今日の気温」「原材料の状態」「製造担当者の判断」といった定性的な情報が品質を左右します。
一方、流通側では温度・湿度・輸送時間といった定量的な情報のみが扱われがちです。
このギャップこそが、食品の「再現性の欠如」「検証不能性」「責任の所在の曖昧化」を生みます。
装舎が手掛けた検証プロジェクトでは、
出荷データ・検査記録・温度管理ログを横断的に解析することで、
「事故発生前の異常パターン」を可視化できることが分かりました。
具体的には、
出荷前検査の再検率が1.5倍を超えたタイミングで、
同一ロットの配送時間が通常より15%長い、
という組み合わせが高リスク要因として特定されました。
従来、人の経験でしか判断できなかった「違和感」を、
AIが事前検知できる仕組みへと変えることが可能です。
重要なのはAIそのものではなく、
AIを「どのプロセスに、どう位置づけるか」です。
装舎では、
判断の手順を明文化し、プロセス単位でモデル化
各工程のデータを連携し、現場の判断根拠を可視化
異常時に関係者全員が“同じ情報”で意思決定できる仕組みを設計
というアプローチを採用しています。
これにより、AIが単なる分析ツールではなく、
“再現性ある管理”を実現する組織の一部として機能します。
装舎の構築例では、Microsoftの標準技術スタックを活用しています。
Power Apps:現場の入力・承認フローをアプリ化
Dataverse:プロセスデータを統合管理
Azure AI Search:過去の判断記録・報告書を即時検索
Power BI:異常傾向や出荷品質を可視化
これにより、既存システムを置き換えることなく、
現場の負担を最小限にした導入が可能です。
AIがプロセスを補完し、データが判断を裏付けることで、
「どの工程で何が起き、どう判断されたか」が明確に残ります。
これは単なる効率化ではなく、
“品質そのものを証明できる仕組み”の構築を意味します。
将来的には、消費者が購入時にそのプロセスを確認できる仕組み(例:製造〜流通のプロセスログ可視化)へと拡張可能です。
食品流通の信頼を守るには、
属人的な努力ではなく、透明なプロセスの設計が必要です。
装舎が取り組むのは、
AI技術の導入ではなく、“信頼の再現性”を設計すること。
つくる人・届ける人・食べる人——
そのすべてが安心して関われる“食の循環”を、仕組みとして支えることが、
私たちの役割です。