INSIGHT|コラム・リサーチ
「もし◯◯したら自動通知」から始める、Logic Appsの第一歩
―小さな自動化が、組織の再現性を生む仕組みへと変わるまで―
Logic Appsの活用は、単なる作業効率化ではなく「判断の標準化」の第一歩である。
“もし◯◯したら通知する”という単純な自動化こそが、
組織の業務データをリアルタイムに動かし、再現性のあるプロセス設計への入り口になる。
この段階から装舎が関わることで、個々の自動化を組織全体の仕組みに昇華できる。
1. 自動化は“大きく始めない”方がうまくいく
多くの企業では、AIやRPA導入の際に「全社導入」「DXプロジェクト」といった大規模構想から始めようとして頓挫します。
しかし、成功している組織は必ず“小さく確実に成果を出せる領域”から始めています。
Logic Appsは、この「スモールスタート」の設計に最適なツールです。
通知や承認といった単純タスクから始めることで、実際にデータが動く手応えを持ちながら改善の感覚を掴むことができます。
2. Logic Appsとは何か:ノーコードで業務プロセスをつなぐ「橋渡し」
Microsoft Logic Appsは、クラウド上で“イベントドリブン(何かが起きたら自動で実行)”な業務フローを構築できるサービスです。
Power Automateと似ていますが、より安定性・再現性・外部システム連携の柔軟性に優れ、企業規模での自動化運用に適しています。
例:
Outlookで新しいメールが届いたら → Teamsで通知
SharePointに新しいファイルがアップロードされたら → Power BIを更新
Dataverseのデータが変更されたら → 担当者にSlack通知
このように「もし◯◯したら→□□する」の積み重ねで、業務全体の流れを“見える”形に変えることができます。
3. 「もし◯◯したら通知」──最もシンプルで効果的な自動化
最初の一歩としてオススメなのが「通知」です。
Logic Appsでは以下のような基本的トリガーを数分で設定できます。
トリガー(起点) | アクション(結果) | 活用例 |
---|---|---|
SharePointに新規ファイルが追加 | Teamsに投稿 | 新しい申請書が届いたことを共有 |
Dataverseのレコードが更新 | メール通知 | 顧客対応のステータス更新を担当者に知らせる |
Outlookで特定の件名メールを受信 | Slack通知 | 問い合わせの緊急対応をチームに即時共有 |
これにより「誰が気づくか」に依存していた作業が、「組織全体が気づける仕組み」に変わります。
これが“属人化からの脱却”の第一歩です。
4. 現場での実例:
① 総務・経理部門
申請書がアップロードされたら自動で承認者に通知
承認が完了したら経理担当にリマインド
② カスタマーサポート
Dataverseの問い合わせデータ更新時にチームへ通知
ChatGPT連携で「過去の類似回答」を自動で添付
③ 製造・品質管理
IoTセンサー値が閾値を超えたら自動で報告
担当者へのメール+Teamsの記録を同時生成
いずれのケースも、「報告」「判断」「共有」の再現性が上がることで、
人の判断が“より重要な領域”に集中できるようになります。
5. 導入のポイント:標準化 × 可視化 × 検証可能性
Logic Appsを導入する際は次の3点を意識します。
標準化:フロー名やトリガー条件を共通化することで、誰が見ても理解できる設計にする。
可視化:Power BIやPower Appsと連携し、通知や実行履歴を「見える形」で共有する。
検証可能性:何がいつ起こったかを記録し、監査対応にも利用可能な状態に保つ。
この“設計の一貫性”こそが、装舎が支援するAI×業務プロセス設計の根幹です。
6. まとめ:一歩の自動化が、組織全体の“判断力”を育てる
「もし◯◯したら通知」というシンプルなLogic Appsのフローは、
単なる便利機能ではなく、**組織の情報の流れを可視化する「観測装置」**です。
これを起点に、
どの情報がどこで止まっているのか
どの判断が属人的なのか
どの業務が重複しているのか
が明らかになります。
装舎は、この一歩を“全体のプロセスデザイン”に接続し、
再現性のある組織運営と、サステナブルな仕組み作りへと導きます。